梅色夜話



 平安末期から、鎌倉初期までを舞台として、室町時代に書かれた『秋夜長物語』ですが、そこに登場した人物たちは、いったいどんな姿をしていたのでしょうか。
 というわけで、梅若公や桂寿くんの御姿、ちょっとだけご紹介します。(いえ、出し惜しみというのではなく、ほんとに、チョ ッとしか、絵姿が見つからなかったのです;ご了承ください。)


 この物語には、実は絵巻物が存在します(←求む書籍化!)。まずはその中から、梅若公と桂海律師の出会いのシーンを。

第三

 (画像大変見づらくて、申し訳ありません。しかも白黒…。そもそも元が不鮮明なのでご勘弁;)

 垣根の間から、じーーーーッと若公を見つめる桂海律師。不審者として通報されても、文句言えないくらいアヤシイです。もは や、「垣間見」の域を越えて、これじゃ「覗き見」…。

 さてその視線の先の梅若公は…

梅若公

 分かりにくいですが、右手で、袴の裾をすこしたくし上げ、左手に手折った桜の枝を持ち、その手で、柳にからんだ髪(頭)を押 さえている……、というふうに見えます。若公の頭の後ろに何かもわっとした白いものと、葉っぱらしきものが見えるので、それが桜なのでしょう。

 「みるふさの如くに、いういうとかかりたる髪のすそ、柳の糸に打纏れて引留めたるを、ほれほれと見かえりたる目つき顔ばせ いふ計なき様……」という本文でしたが、ゆったりとした若公の美しさが伝わってきます。
 

 次は、いきなり飛びますが、悲しくも入水なされた若公を引き上げ、泣き叫ぶ桂寿くんと桂海律師、というシーン。

第二一

 「律師は顔を膝にかき乗せ、童は脚を懐の中に抱きて……」という本文そのままの描写です。
 若公が着ているのは、紅梅の小袖。乱れた髪と、ぱったりと地に打ち捨てられた手が悲しみを誘います。しかし、そのお顔は、 すこし微笑んでいるようにも見える…!?
 
 一方、桂海律師は……、おおッ!若公の懐に手を入れるとはハレンチな!ではなくて、心臓の鼓動を確かめているのでしょう。とはいえ、若公が、水干ではなく小袖を召していたからこそできた描写ですねv

 さて、管理人イチオシの桂寿くんv 彼も、若公の膝に突っ伏して泣き悲しんでいます。
 若公よりも、少し小柄に描かれているところをみると、やはり若公(16,7)よりも、年下なんでしょうね〜。非常に萌です。
 さらに特筆すべきは桂寿くんの髪形!なんとこう↓なっています。

桂寿くんの後頭

 一つに束ねた髪を、さらにリボン状に二つの輪をつくって留めているようです。
 稚児は、髪の毛を非常に長く伸ばしていて、自身の背丈ほどになっているコトもあります。さすがに邪魔なときもあるんでしょうね。こういう結い方は、はじめて見たのですが、いかにも活発な桂寿くんらしくて、良いと思いますv


 絵巻からは以上の2点のみですが、おまけに江戸時代前期に書かれた、「岩つつじ」(著・北村季吟)という古典男色和歌・物語選 集(ようするに、BLな和歌や物語ばっかを集めて解説した本)の挿絵をご紹介。

『岩つつじ』挿絵

 この絶妙に江戸ナイズドされたキャラや背景…、味わい深いです。
 桂海律師は、すでに準備万端。枕が一つ、というのもイヤラシイですな。この絵では、桂海さんは、ちょっと年配にみえますが 、実際は三十路です。(どうも僧侶=おじーさんという潜入感があってイケマセンね。)

 若公と桂寿くんは…

若公と桂寿

 若公は稚児髷に、THE 貴族な御衣装です(笑)。でもちょこっと出た足や手が、可愛らしいです。
 桂寿くんの髪形は、茶筅とかいう結い方ですね。それに裃(かみしも)、腰には刀。こちらはTHE 家来という感じです。子どもな のに、大人の格好させられているところとか、惜しげもなくみせるナマ足が、たまりませんvv
 そして、ふたりで戸を指差して、どんな会話をしているのでしょうか(妄想)。あー、その細くてちっちゃい手をつなぎあったり してたんだなぁと思うと、萌も倍増ですv

ブラウザを閉じて下さい。