梅色夜話



◎『伊勢物語』第四十六段


 昔、男には、たいへん「うるはしき(親密な)」友人がいた。
 少しの間も離れず、互いに思い合っていたが、その友人が他国へ行ってしまうのを、とても悲しく思いながらも、別れてしまった。
 月日が経って、その友人が送ってきた文に、
 「会わないまま月日の経ってしまったことに、我ながら驚きあきれています。私をお忘れになったのではないかと、いたく嘆きに思い沈んでおります。世の中の人の心は、会わなくなると忘れてしまうもののようです。」
といってきたので、男はこう詠んで送った。
 『目かかるとも思ほえなくに忘らるる 時しなければ面影にたつ』
 (お会いしていないとは、私には思われませんのに。私にはあなたを忘れる時などありませんので、あなたが幻となって現れます。)




 熱ーい、深ーい友情ですね!腐女子にゃ友情も愛情もおんなじだー!!
 偉い人も「これは男色譚だ」と言っておられます。
 ふつう友人なら、「会えなくなっても、ずっと友達だよ」となるはずですよね!? それを、「私のこと、お忘れになったんじゃないですか…?」と涙ながらに手紙をよこす!
 絶対「男」、キュンとなっただろ! 「可愛いヤツだ」と思っただろ!

 友人の微妙な敬語にけっこう萌。男の返事は和歌なので、二人の立場がどうなっているのか分かりませんが、「男×友」でしょうな(プラトニックなんだろうけど)。
 女性がらみばかりの『伊勢物語』の中にあって、男同士の濃密な友情を描くこの段は、妙に輝いて見えます。

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