梅色夜話



◎『徒然草』第四十三段

 晩春のころ、のどかで優艶な空の下、なにやら高貴な人の住んでいそうな家があった。
 奥深く、木立のどことなく古い感じ、庭に散りしおれた花が見過ごせなかったので、中へ入って見ると、南面(みなみおもて:母屋の正面)の格子(=蔀:しとみ)は全て下ろしてあって、さびしげであったが、東側へ行くと、妻戸(つまど:出入口の両開き戸)がちょうどいい加減に開いている。
 そして、御簾の破れた所から中をみると、二十歳くらいの容貌の美しい男が、くつろいではいるが、奥ゆかしくゆったりとした感じで、机の上に書物を繰り広げて見ていた。
 どのような人なのか、尋ねて聞いてみたいものだ。




 で、聞いたのか!? 名前と電話番号も聞いたのか!? メールアドレスも交換したのか!?
 …っと、分けの分からないことを口走ってしまいましたが、結局、彼についても、その後の展開も不明であります。ちゃんとフォローしておいてほしいよなぁ。
 しかし、兼好法師殿もやっぱり法師だったということか。
 趣き深い屋敷とみるや、勝手に入る兼好法師(いいのかな?)。そしてのぞき見た部屋には、優雅に読書をする美青年。法師の胸は、高鳴るのであった…(妄想)。

 ちなみに、今回の出典は、「新潮日本古典集成」からなのですが、この段の解説がなかなかオモシロいです。
 「(文中の表現より、兼好法師がだんだんと屋敷に近づいていることが分かる、と解説。)このようにして、作者の視線は、部屋の中で書見している若い男の姿にしぼられていくのである。」
 法師ってば、青年に釘付けじゃぁないですか!
 それにしても、この心情、『犬枕』における、「問いたきもの 若衆を見て」というのに通じてますね。

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