梅色夜話



■蘭丸特集 その二■

◎『常山紀談』より

−森蘭丸才敏の事−

 森蘭丸は、三左衛門可成が子にて、信長寵愛厚し。十六歳にて、五万石の地をあたへらる。ある時、刀を持たせ置かれしに、刻鞘(きざみざや:鞘の刻み目)の数を数え居たり。
 後に信長、かたへ(まわり)の人をあつめ、「刻鞘の数、いいあてなん者に、この刀をあたふべき」由、言はれければ、皆推し測りていひけるに、森は「さきに数えて覚えたり」とていはず。信長、その刀を森にあたえられけり。云々……



 このエピソードを、老武者の備忘録『武者物語』で補うと、蘭丸は信長公が、雪隠(トイレ)にいかれた折に、お刀をもってお供し、待っている間に鞘の刻み目を数えていたそうです。しかも信長公は、それをご存知の上で、このゲームを催したということです。
 みんながはりきって答える中で、ひとり黙っている蘭丸。そこで、信長さまの言うことには、
 「らんは、どうして申さぬのか」
 「私は先に数えて知っていましたので」と蘭丸が言うと、信長さまは感心してお刀をくださった、ということだそうで。
 
 結局、蘭丸がどんな答え方をしても、刀をあげるつもりだったんですね〜。わざわざみんなの前で、蘭丸を持ち上げるところが、ニクい信長さま。蘭丸に対する信長さまの可愛がりっぷりが垣間見えるエピソードです。

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