梅色夜話



■蘭丸特集 その五■

◎『朝野雑載』より

 橘を多く台に積んで、森お蘭是を披露す。信長公御覧有て、
 「おらん、其方が力にてはあぶなし。倒るるな」
と仰せけるが、案のごとく、台をもちながら倒れたり。みかんも座中に散りければ、信長公、
 「それ見よ、我目ききは違はず」
とわらひ給ふ。

 其後、或人おらんに向かひ、
 「御前にてあやまちし給ひ、笑止なり(気の毒に)」
といひければ、おらんが曰く、
 「少しも迷惑せず。信長公あぶなしとおほせつるに、この台をよく持ちとどけぬれば、御目きき違ふ故に倒しなり。御座敷にてたほれたりとて、武道のきずにはならず」
と答えけるとかや。




 みかんを台に沢山つんで、信長さまの御目にかけるお蘭(何目的? 親戚から送られてきたんだな、きっと)。
 それを見た信長さまは、「お前の力ではあぶない。倒れるなよ」とお声をかけます。 えええッ、なんか優しーぞ!? 信長さまってそんなコト言う人だったのか? 「お前の力」って! お蘭の力知ってんのかッ!?
 …しかし、やはりお蘭はみかんの積まれた台を持ったまま倒れてしまいます。信長さまは得意げに、「やっぱり俺の思ったとおりだ」とお笑いになりました(ドジっ子おらん萌?)。

 並みの人間なら、殿の御前で転ぶなんて、恥以外の何物でもありません。面目丸つぶれ。ですが、お蘭はそれよりも、信長さまの目利き(判断・予想)を実現させることを優先し、"わざと"倒れていたのでした。

 やはり蘭丸さまは、日本一気の利く御小姓だ!! でも嫌々仕えている、という感じがしないのがいいですね。思慮深くて、謙虚な部分もあるけれど、それがかえって自分にプラスの結果をもたらしてくれることを知ってるんでしょうね〜。 もしかすると、すべては計算済みの行動なのかも知れません(小悪魔!)。


 さて、今までのエピソードを振り返ってみると、う〜ん、信蘭ってなんというかツンデレ?、と思えてきました。みんなの前では、蘭丸に次々と試練を課す信長さまですが、それも愛ゆえというか、蘭丸をほめる口実というか……。
 蘭丸もそれを分かってて付き合って(あげて)いるような感じがします。ありきたりだけど、やっぱり二人の間には、特別な絆があると思いたいですね。



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