梅色夜話



■軽口衆道往来 ダメ男 その一■

 男色だろうと女色だろうと、恋の道において人としてやっちゃあイケナイことってありますよね? 今回は、それをやっちまった残念な男たちをご紹介。たまには最ッ低な攻さんも見てみたい!?



◎軽口露がはなし「吝き(しわき=ケチな)坊主の若衆ぐるひ」

 ケチな坊主がある若衆を恋わびて、数々の文を送って口説いたところ、この若衆は通り者(恋の道の通人)であって、一晩坊主のもとへ泊まりに来た。
 翌朝、雨の降る音を聞きつけた坊主は、
 「南無三宝、泊めてくやしや。朝飯をふるまはずばなるまひ。空寝入りして、起きて帰るを知らぬふりにせんこそよからめ。
 (しまった。泊まらせたのは悔しいことだ。朝飯を御馳走しなければならない。寝たふりをして、起きて帰るのを気付かないふりをするのがいいだろう)」 
と考えていると、若衆はそっと起きて出て行った。
 「もはや門の外へも出ぬ。(もう門の外へ出て行っただろう)」
と思ったが、気がかりになって起きて見ると、若衆はまだ門の内で立ち止まっていた。坊主は驚いて、立ったまま目を閉じて、大いびきをかいたのだった。

*このお話は*
 朝ごはん代すらケチる坊様。あんた、この子が好きだったんじゃないのかよ!真実の愛とは言いがたいですね。

*ポイント*
 「通人」。色恋の道に通じた人。攻さんに遣うと「プレイボーイ」的な印象なんですが、受における「通人」とは?
 色々な通人若衆さま(と文中で書かれている子)のエピソードを見てきた感じでは、どうやら「自分に思い焦がれている男のもとへ、自分から出向いて、思いを晴らさせてやる」若衆さまのことみたいです。これは「誘い受」?
 しかし、たいていは一夜限りの関係で終わってしまいます。そして芳しい思い出だけを残し去っていった若衆さまは、次なる恋の病に苦しむ人を看病しにいくんでしょうね、きっと……。いや、淫乱ってわけじゃないと思いますよ;
 やはり「通人」という言葉でしかあらわせない概念でしょうか。


◎軽口御前男「恋の出来蔵(できぞう)」

 ある若衆に、出来蔵という奴(やっこ=武家の奴僕。いかつい姿で粗暴な者が多い)が心をかけ、千束もあるかというほどの文を送ったのだが、一通の返事もない。
 ある夕暮れに、生玉の馬場(現・大阪市)の先で出会うと、出来蔵は若衆を取り押さえ、
 「日頃心をつくせどもかひなし。さあ、いなせの返事はいか。(日頃真心を込めているというのに甲斐がない。さあ、承知か不承知か、返事はどっちだ)」
と、脇差を抜く姿勢でどなった。若衆は「もうどうしようもない」と、こちらも脇差を抜いたところ(応戦するつもり)、出来蔵は肝をつぶし(非常に驚き)、
 「やれ人殺し、であえであえ!(おおい、人殺しだ!誰か来てくれ)」
とわめいたのは、なんとも大きな思い違いである。

*このお話は* 
 自分がさきに脇差を抜こうとしたのだから、人殺しは出来蔵の方。何があっても暴力に訴えるのはイケマセン!

*ポイント*
 普段は武家の召使いとして、主人の恋文を若衆さまにとどけたりしている「奴」ですが、自分だって恋もします。しかし、強面でごつくて、振る舞いも乱暴な彼らはあまりモテないみたいです;
 ちなみに若衆が男を振る理由第一位は、「すでに念者さまがいるから」。つづいて僅差で「自分の心にかなう、理想の相手ではないから」。(「管理人のいい加減な調べ」より)


◎きのうはけふの物語(下・12)

 なんとなく全体的にアレなんで、反転で。
 非道な者、ある若衆を無理やり押し付け、苦しめて(痛いのです…)、そのあとを指でひどくくじる。
 「これは何事ぞ、狼藉なるしかたぢゃ。言語道断の事。(なにをするんですか、乱暴な!とんでもない事!)」
と言って腹を立てると、男は
 「これほど味のよひは不思議ぢゃ。中に毛×びがあらふ。(こんなに味が良いのは不思議だ。中に女×があるのだろう)」
と言った。


*このお話は*
 反転の上に伏字ですみません; しかし、これを書いちゃあダメですよねぇ? ヤる事も最低なら、言う事も最低の"無道なる者"でした。

*ポイント*
 やっぱり男色にもある「強×」; もう何も言いません……
 こんなひどいことをされながらも言う台詞にあまり緊迫感がないのは、オモシロイですが。



**まとめ**
 いつの時代もダメな人のダメな行いはおんなじですね。こんな行為は決してしないように、念者さまは心がけてほしいものです。若衆さまも、悪い男に引っかからないように正しい目を養ってください!
 それでも力及ばず、無体を強いられるときはどうすればいいんだろう…? む、難しい問題だ…;

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